保健科学研究 第12巻 2号 原著論文

原著論文

学生指導において看護教員が感じる看護教育上のジレンマの因子構造と関連要因

鎌田洋輔 木立るり子 坂本弘子 木村千代子 前田美佐子 澤崎恵美 川口智恵美 笹竹ひかる 坂井哲博

誌名:保健科学研究 第12巻2号 pp1-8
公開日:2022/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:ジレンマ,看護教員,看護教育,因子構造
本文:PDF(0.5MB)

要旨

看護教員が感じる看護教育上のジレンマの因子構造と関連要因を明らかにするため,A県内の看護教員159名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。調査内容は,対象者の属性,看護教育上のジレンマ21項目に対するジレンマを感じる程度,教員支援体制の有無であった。有効回答は81部であった。看護教育上のジレンマに対し因子分析を行った結果,【多様な学生に合わせて指導するジレンマ】,【本音がわからない/反応が読めない学生に指導するジレンマ】,【保護者からの期待に関するジレンマ】,【指導の意図が学生に伝わらないジレンマ】の4因子が抽出された。各因子の内的整合性をCronbach’s αを用いて確認した結果,内的整合性を確認できた。ジレンマの程度と属性との関連をKruskal-Wallis検定(多重比較にDunn-Bonferroni法)を用いて検討した結果,教員経験年数との関連が認められた。4年以上6年未満のグループで,学生への対応に伴うジレンマが高く,支援の必要性が示唆された。


非利き手での箸操作練習において使用する物品の重さの違いが練習成果に及ぼす影響について

上谷英史 平川裕一 柏崎勉 金谷圭子

誌名:保健科学研究 第12巻2号 pp9-14
公開日:2022/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:箸操作,非利き手,練習
本文:PDF(0.4MB)

要旨

本研究の目的は,箸操作練習に使用する物品の重さの違いが練習成果に及ぼす影響を検討することである。対象者は左手での箸操作経験がない健常者20名であった。方法は,2群に対して,手と箸の位置関係を示した丸箸を左手で把持させ,一方の群には10gの球体,他方の群には50gの球体をつまみ上げる練習を実施し,普通の箸にて操作能力を測定した。その結果,10g群は,5日間で,球体の移動の成功個数が増加,失敗個数が減少,練習時に使用していない重い50g球体の成功個数も増加した。また,50g群に比べ,練習時に使用した球体の成功個数が多く,失敗個数が少なかった。練習時に使用していない重い球体の失敗個数も少なかった。以上のことより,箸操作に必要な手指動作の学習のための練習において,軽い物品を用いることは失敗が少ない成功体験が得られ,高い箸操作能力の獲得に有効であることが推察された。


報告

事例検討やロールプレイを取り入れた放射線教育プログラムの実施と評価:保健師学生の学びから

多喜代健吾 北宮千秋 山田基矢 大森純子

誌名:保健科学研究 第12巻2号 pp15-22
公開日:2022/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:保健師教育,放射線教育プログラム,ロールプレイ
本文:PDF(0.4MB)

要旨

事例検討やロールプレイを取り入れた放射線教育プログラムの評価および実施後に学生が役立つと認識した学びを明らかにする。方法:対象は大学において保健師免許取得を目指す3年次学生16名とした。プログラムは①放射線の基礎,②関連法規と保健活動,③事例検討,④ロールプレイから構成された。プログラム実施後に学びの到達度や実施方法等ついて質問紙調査を実施し,その場で回収した。プログラムは2017年12月に実施した。結果:プログラムの学びの到達度,実施方法等の評価は総じて高かった。特に事例検討・ロールプレイの内容に関する項目の平均値はすべて4.5(範囲:1‐5)以上と高かった。学生が役立つと認識した学びとして【本心を引き出す傾聴の大切さ】や【住民の価値観や文化を尊重】することなどがあった。考察:プログラム目的は概ね達成されたと考えられた。本プログラムは,放射線に関する基礎知識の獲得に有効であることが示唆された。


個人ワークによる体験的な課題を取り入れたコロナ禍における認知症看護に関する「家庭看護」の授業評価

大津美香 小野加南子 光井悠真 工藤麻理奈 成田秀貴

誌名:保健科学研究 第12巻2号 pp23-31
公開日:2022/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:家庭看護,授業評価,認知症,体験的な課題
本文:PDF(0.7MB)

要旨

本研究の目的は、コロナ禍においても実施可能な個人ワークによる体験的な課題を「家庭看護」の認知症看護に関する授業に取り入れ、その効果を検証することであった。履修生23名を対象に、自記式質問紙調査を授業の前後に行った。その結果、認知症高齢者を社会全体で支えていくことの重要性(p<0.01)と認知症高齢者が困っていた場合の支援意欲(p<0.05)が授業後に有意に高まった。認知症のスクリーニングテストの体験後には認知症高齢者の気持ちを考えるきっかけになったと「とても思う」16名(76.2%)、「まあ思う」5名(23.8%)の回答が得られた。認知症のスクリーニングテストの実体験やVTR教材を用いて認知症の行動心理症状への望ましい対応方法を考察する等の体験的な課題を行ったことが相乗効果となり、認知症の人を社会全体で支援していくことの必要性を認識することにおいて、有用であったと考えられた。