保健科学研究 第13巻 1号 原著論文

原著論文

急性期病院入院脳梗塞患者における意識障害の程度とリハビリテーションの実施状況を考慮した自宅退院関連因子の検討

松本幸樹 加藤拓彦 澄川幸志 田中真

誌名:保健科学研究 第13巻1号 pp1-8
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:脳卒中,急性期,意識障害,リハビリテーション,予後予測
本文:PDF(0.6MB)

要旨

【目的】脳卒中患者における急性期病院退院時の自宅退院関連因子を,意識障害の程度とリハビリテーション(リハ)の実施状況を考慮し検討する。

【方法】対象は急性期脳卒中患者134名とした。調査項目は25項目とした。転帰先の予測因子を検討するために,転帰先を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施し,選択された項目についてReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用い,カットオフ値を算出した。

【結果】Japan Coma Scale(JCS)2桁以上の患者は93.7%(15/16)が転院していた。JCS1桁以下の患者における転帰先関連因子とカットオフ値は,National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS) 3.5点,Instrumental Activities of Daily Living (IADL)練習実施の有無であった。

【結論】急性期病院退院時の転帰先は,入院時JCS2桁以上の患者は転院が高確率であることを考慮し,JCS1桁以下の患者は,入院時NIHSSのカットオフ値から判断することが有用である可能性が示唆された。また,IADL練習を積極的に実施することで,転帰先の改善に寄与する可能性が示唆された。


COVID-19感染拡大に伴う看護系大学教員の授業設計および動機づけ支援の実態

佐々木重徳 冨澤登志子

誌名:保健科学研究 第13巻1号 pp9-16
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:COVID-19,授業設計,オンライン授業,動機づけ支援
本文:PDF(0.8MB)

要旨

COVID-19感染拡大に伴う看護系大学教員のオンライン授業設計の内容,学習者への動機づけ支援など,看護教育上の課題を明らかにするため,全国の看護師等養成所287施設の看護大学教員1,435名に対して,自記式質問紙調査を実施した。結果,94.5%でオンライン授業が実施されていた。オンライン授業実施の際、「教員のアプリケーション操作スキルが不十分」などの問題が生じていた。オンライン授業での実習,演習,シミュレーションの実施率はそれぞれ51.2%,48.3%,25.0%だった。学習者への動機づけ支援は、リアルタイム型授業の方が実施度は高かった。ほとんどの大学でオンラインに移行したが,課題が生じており,教員の負担が推察された。また,学生が動機づけを維持できるように教員は工夫していたが、その効果や方法については,手探りでの対応であったことがうかがえた。


報告

青森県の二次救急医療施設における看護師と救命士の傷病者搬入時の連携の認識

山崎千鶴 藤田あけみ

誌名:保健科学研究 第13巻1号 pp17-27
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:二次救急医療施設,連携の認識,質的分析,看護師,救命士
本文:PDF(0.8MB)

要旨

本研究の目的は、青森県二次救急医療施設の救急外来看護師(以下、看護師とする)と救急救命士(以下、救命士とする)間の傷病者搬入時の連携の認識を明らかにすることである。看護師と救命士を対象に傷病者搬入時における連携の現状について面接調査を行い、質的に分析した。結果、看護師と救命士の共通した認識は、【通報の標準化が必要】【合同の検証会・勉強会が必要】【顔の見える関係が必要】【病院前救急活動の理解が必要】【意見交換の機会が必要】【人材育成が必要】であり、両者は、円滑な連携構築のために情報共有の必要性を強く認識していた。救命士のみに認められた認識は【医療施設との関係性の構築が必要】【コミュニケーションが必要】であり、救命士は関係性の構築の必要性を強く感じていた。


放射線リスク・コミュニケーター育成セミナーの必要性に関する研究
-原子力発電所周辺自治体職員への調査-

成田秀貴 木立るり子 山田基矢 工藤ひろみ 工藤幸清 小山内暢 辻口貴清 小倉巧也 田中真

誌名:保健科学研究 第13巻1号 pp29-37
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:放射線リスク・コミュニケーション,原子力発電所事故,人材育成,地方自治体職員
本文:PDF(0.6MB)

要旨

福島第一原子力発電所の事故後,住民に対して被災直後から行われてきた支援のひとつである放射線リスク・コミュニケーションは発展途上にあるいわれている。セミナー等が開催されているものの,原子力発電所周辺の自治体職員に望まれる研修内容や開催方法に関する全国的な調査は少ない。そこで今後の育成セミナーの開催に向けて,対象者の望む研修内容や開催方法に関する全国的な質問紙調査を実施した。地方自治体121施設における原子力対策に関する課,学校教育に関する課,保健・健康に関する課へ3部ずつ合計1,089部の質問紙調査票を郵送し,回収した149部を分析対象とした。放射線リスク・コミュニケーションを実施する機会があるという認識は所属ごとに異なったが,全体的にセミナーへの参加希望が多かった。セミナーの内容には放射線に関する知識だけでなく放射線リスク・コミュニケーションの内容も希望され,セミナーの形態は講義と演習の両方を希望するものが多かった。放射線リスク・コミュニケーターに必要と考えられる知識は,約6割が放射線に関する知識,約5割がリスク・コミュニケーションの知識であった。セミナーの開催方法については平日かつ1日の終了が希望され,仕事としての参加,交通費は支給されるものという認識が多かった。本調査の結果は,放射線リスク・コミュニケーター育成セミナーを開催する際に,セミナーの内容や開催方法などを検討するための基礎資料となる。