保健科学研究 第7巻 1号 原著論文

原著論文

在宅医療におけるX線画像情報転送システムの構築

工藤幸清 真里谷靖 寺島真悟 鈴木紀行 川原田恒 小山内暢 廣田淳一 細川洋一郎 佐藤真由美 北嶋結 丹藤雄介

誌名:保健科学研究 第7巻 pp1-5
公開日:2017/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:在宅医療,X線撮影,FPD,VPN,画像転送
本文:PDF(0.5MB)

要旨
在宅医療の普及に伴い,患者の居宅におけるX線撮影が可能となっている。また,在宅医療に利用される診断用X線装置の高性能化が進み,X線画像検出器もFlat panel detector(FPD)が開発された。FPDは撮影後直ぐに画像が得られる特徴を有する。今回,我々はFPDの特徴をさらに在宅医療に活かすため,暗号化技術のVirtual private network(VPN)接続された弘前大学のサーバにX線画像を在宅現場から転送できるX線画像情報転送システムを構築した。本転送システムがFPDを所有する青森県深浦町ならびに東通村で実用可能か調べるため,画像転送時間の測定とネットワーク通信状況を調査した。その結果,通信状況を示すアンテナマーク2本以上の場合,1画像を転送するのに必要な時間は60秒以下であり,かつアンテナマーク2本以上の場所は多数存在した。両地域での本転送システムの利用は十分可能であると考えられたため,運用を開始し,在宅からの画像をいち早く確認できるように,診療所の一般的なパソコンや外出先でのノートパソコンによる画像閲覧を可能とした。


在宅医療のX線撮影に利用されるFlat panel detector の画質特性と視覚評価

工藤幸清 真里谷靖 寺島真悟 鈴木紀行 川原田恒 小山内暢 廣田淳一 細川洋一郎 佐藤真由美 北嶋結 丹藤雄介

誌名:保健科学研究 第7巻 pp7-12
公開日:2017/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:在宅医療,X線撮影,FPD,画質特性,視覚評価
本文:PDF(0.7MB)

要旨
在宅医療のX線撮影に利用できるFlat panel detector (FPD) システムが開発された。我々はこのFPDの画質を評価し,撮影時の適正な線量の目安を客観的に評価することを目的として,医療施設内で利用されている高解像度の Irradiation side sampling (ISS-FPD)と比較した。画質として,解像特性[pre-sampled modulation transfer functions (MTFs)],ノイズ特性 [Normalized noise power spectrums (NNPS)],検出量子効率 [Detective quantum efficiencies (DQEs)] による画質特性,ならびにバーガーファントムを撮影し,Image quality figure (IQF) による視覚評価を行った。その結果,在宅のFPDは解像特性ではISS-FPDより劣るが,ノイズ特性ではISS-FPDよりも良好であり,検出量子効率ではISS-FPDと同程度であった。また,視覚評価においても,在宅のFPDとISS-FPDのIQF値は同程度であった。このことから,在宅でのX線撮影において,医療施設でのX線撮影と同じ撮影条件で同程度の画質が得られることが示唆された。


運動負荷に伴う酸化ストレスマーカー8-oxo-dG及び炎症関連マーカー血清MMPsの経時的変動~血清・唾液・尿検体の有用性の検討~

福士泰世 中村歩美 白戸佑貴 田中健登 伊藤拓也 野沢祐貴 井瀧千恵子 真里谷靖

誌名:保健科学研究 第7巻 pp13-20
公開日:2017/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン,酸化ストレス,運動負荷,尿,マトリックスメタロプロテアーゼ
本文:PDF(0.7MB)

要旨
本研究の目的は,酸化ストレス増大の一因となり得る運動負荷を実施し,血清,唾液,新鮮尿中の酸化ストレスマーカー8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-oxo-dG)及び炎症関連マーカーMatrix metalloproteinases (MMP-9, MMP-2)の経時的変動の観察・解析から生体内の酸化ストレスを鋭敏に反映する検体及び手法について検討することである。対象者は健常な男子学生7人,運動負荷として1kmあたり6分の設定で6km走を実施し,運動強度は10メッツ(metabolic equivalents)とした。各サンプルは運動1時間前,運動1時間後,運動24時間後に採取した。8-oxo-dGの分析は免疫測定法で行い,MMP-9及びMMP-2の分析はゼラチンザイモグラフィーで行った。血清及び唾液中8-oxo-dGでは,3時点における有意な変動はなかった。一方,尿中8-oxo-dGは,運動1時間後に有意に増加し,運動24時間後には,運動1時間前と同等の値まで有意に減少した。MMP-9においても尿中8-oxo-dGと同様の変化が認められた。運動が惹起する生体内の酸化ストレスを鋭敏に反映するサンプルは新鮮尿であることが示唆された。 


福島第一原子力発電所事故により避難生活を送る高齢者の運動機能低下の実態と身体活動向上への予防的介入の試み

井瀧千恵子 福士泰世 加藤拓彦 小山内隆生 大津美香 笹竹ひかる 北島麻衣子 冨澤登志子 細川洋一郎 西沢義子

誌名:保健科学研究 第7巻 pp21-27
公開日:2017/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:福島第一原子力発電所事故,高齢者,身体活動,ロコモティブシンドローム
本文:PDF(0.9MB)

要旨
【目的】本研究は,避難中の高齢者の身体活動向上への方法を探ることを目的に,原発事故により避難生活を継続し仮設住宅に居住している高齢者を対象に,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の実態を調査した。

【方法】8名の高齢者を対象とし,測定項目は「ロコモ度テスト」と握力測定とした。測定項目の他にプログラムとして,ロコモ予防のためのロコモ体操,手芸・工芸を実施する軽作業,健康ミニ講話で構成した。

【結果】介入期間中に8月と半年後の2月に「ロコモ度テスト」を実施した。半年間でロコモに該当していなかった2名がロコモ度1へ悪化し,2名とも立ち上がりテストの得点が低下していた。握力は全国調査の結果に比べ,介入前後共に低い値を示した者が多かった。プログラムの満足度はvisual analog scale( VAS)で88.4±7.5であった。

【考察】ロコモ度が悪化した2名については,下肢筋力の低下が推測される。本介入による握力の変化は認められなかったが,7割の対象者が全国平均よりも低値であり,避難生活の継続により体力の低下を引き起こしていることが示唆された。

【結論】本研究ではロコモ度2が半数であり,握力の低さからも筋力低下が推測された。