Health Science Research Vol:8 No.1 Original Article
総説
時間栄養学と健康
加藤秀夫 田中夏海 齋藤望 前田朝美 今村麻里子 妹尾良子 出口佳奈絵 西田由香
誌名:保健科学研究 第8巻1号 pp1-7
公開日:2017/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:総説
キーワード:口から食べることの大切さ,血中副腎皮質ホルモンリズム,明暗周期と摂食パターン
本文:PDF(0.5MB)
要旨
からだのリズムは,ホメオスタシスと異なった調節機構で健康づくりと生活習慣病の予防において重要な生理的役割を果たしている。まず,からだのリズムと摂食行動との関連を明らかにするために血中副腎皮質ホルモンのリズム形成を調べた。その結果,ホルモンのリズム形成に,口から食べることの大切さと消化管の役割を明確にした。また,血中副腎皮質ホルモンの日内リズムには,明暗周期よりも摂食時刻が重要であることを示唆した。活動と明暗の周期性に体温のリズムが深く関与していることも明らかにした。1 日3 食の食事摂取のタイミングと健康効果を時間栄養学の観点から考察した。健康と競技力向上を目的にしたスポーツ・運動と食事の組み合わせについても検討した。最後に,食塩制限の効果的な摂食時刻を明らかにし,適塩の重要性を浮き彫りにした。
原著論文
新たな「放射線被ばくの早見図」の提案 ~対数表示から面積表示へ~
小山内暢 細川洋一郎 對馬惠 工藤幸清 真里谷靖 柏倉幾郎 齋藤陽子
誌名:保健科学研究 第8巻1号 pp9-15
公開日:2017/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:放射線被ばく,被ばく線量,早見図,面積表示,対数表示
本文:PDF(0.7MB)
要旨
医療放射線や自然放射線による被ばく線量や線量に応じた人体への影響を示す「放射線被ばくの早見図」が多
くの場面で用いられてきたが,現在見受けられるものは線量の軸が対数目盛になっており決して平易な表示方法ではない。今回我々は,より正確に理解しやすい表示方法として,線量を面積で表す「面積表示の放射線被ばく早見図」を新たに考案した。63 名を対象としたアンケート調査を実施し,考案した面積表示の早見図の有用性を評価した。対数表示または面積表示のいずれかの早見図を対象者に配付し,CT 検査,PET 検査,胸のX 線集団検診における被ばく線量がどの程度であると捉えるかを視覚的アナログ尺度にて評価した。いずれの質問でも面積表示の図を用いた方が被ばく線量は有意に小さく捉えられており,かつ実際の値に近い結果であった。本調査により,考案した面積表示の放射線被ばくの早見図が線量の正確な理解に有用であることが示唆された。
幼児期における協調運動と行動及び情緒的問題の関連
三上美咲 斉藤まなぶ 高橋芳雄 足立匡基 大里絢子 増田貴人 中井昭夫 中村和彦 山田順子
誌名:保健科学研究 第8巻1号 pp17-24
公開日:2017/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:5歳児,協調運動,行動及び情緒的問題,多動
本文:PDF(0.4MB)
要旨
本研究は,幼児期における協調運動と行動及び情緒的問題の関係を明らかにすることを目的とした。評価尺度にはDCDQ 日本語版(DCDQ-J)とSDQ 日本語版保護者用(SDQ-P)及び教師用(SDQ-T)を用い,2923 名の5 歳児に関する回答が得られた。統計解析の結果,DCDQ-J 合計得点とSDQ-P 総合困難度との間に有意な相関関係(r=-.446,p<.001)が認められたが,SDQ-T においては相関関係が認められなかった。SDQ-P 下位項目では,「多動」においてDCDQ-J 合計得点との比較的強い相関(r=-.398,p<.001)が示された。本研究の結果から, 5 歳においても協調運動機能が低い児ほど行動及び情緒的問題における支援を必要としていることが明らかとなった。また,彼らの行動及び情緒的問題は集団の中では気づかれにくい可能性や,それらの問題の表れ方は子どもの性別や年齢によって異なることが示唆された。
高齢期女性が生涯で習得した生活技能と継続による効用
-フォーカス・グループ・インタビューから-
木立るり子 柳谷咲希 萬谷友理 渡邊彩乃 北嶋結 大津美香 米内山千賀子 日景弥生
誌名:保健科学研究 第8巻1号 pp25-31
公開日:2017/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:高齢者,生活技能,介護予防,フォーカス・グループ・インタビュー
本文:PDF(0.4MB)
要旨
本研究の目的は,高齢期になって役に立っている生活技能が何か,そしてそれはいつ頃どのようにして習得したか,それを継続することによる利点が何かについて,女性の視点から,地域差も含めて明らかにすることである。第一次産業が中心であった町および地方都市の2 ヵ所で,心身に特段の不具合がない35 名の高齢者を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施した。質的に分析した結果,【子どものときからの生業の手伝いで習得した】【子どものときから家庭の役割の中で習得した】【学校では家庭で習得する以外の生活技能を教わった】【大人になってからの生活のなかで技能を修得した】【過去の生活のなかで覚えた知恵や工夫は今に活かされている】の5 カテゴリーが抽出された。幼少時から各家庭や学校で習得した生活技能は高齢期になっても役立っていることが明らかになり,それらの生活技能の継続使用は,介護予防の観点から重要であることが示唆された。
報告
高齢者への聞き書きを通して看護学生が学んだこと
駒谷なつみ 大津美香 木浪麻里 佐藤智子 山田基矢 米内山千賀子 北嶋結 木立るり子
誌名:保健科学研究 第8巻1号 pp33-40
公開日:2017/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:聞き書き,高齢者,看護学生,実習
本文:PDF(0.4MB)
要旨
本研究の目的は,高齢者への聞き書きによるインタビューの実施によって看護学生にどのような学びが得られるのかを明らかにすることである.老年看護学実習Ⅰを履修した看護学専攻2 年次学生19 名を対象とし,4 グループに分けグループインタビューを行った.全体を通して,看護学生が高齢者への聞き書きを通して学んだことで最も多かったのは,【コミュニケーション技術】であった.高齢者の生活歴を通して,自分たちの生きている時代背景と比較して,学生自身も生活歴を振り返るきっかけとなっていた.老年期の人生を振り返る意義については発達課題と関連した学びが得られていた.また,生活自立度の高い高齢者に直接インタビューを行うことにより,高齢者の様々な側面をプラスに捉える機会となっていた.さらに,学生には高齢者に対する気遣いや思いやりの気持ちも生まれ,聞き書きを通して高齢者理解のための実習目標以外に副次的な効果も得られた.