Health Science Research Vol:8 No.2 Original Article
原著論文
弘前地区における下痢症患者由来 Campylobacter の分離状況
佐藤瑠海 佐藤拓弥 藤岡美幸
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp1-5
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:細菌性食中毒,Campylobacter腸炎,Campylobacter jejuni,Campylobacter coli,薬剤耐性
本文:PDF(0.8MB)
要旨
Campylobacterは世界中で流行している細菌性食中毒起因菌である。本研究では2016年4月から2017年3月の期間に,青森県弘前地区の医療検査機関で分離された腸炎由来Campylobacter 230株について,検出状況と薬剤耐性を調査した。薬剤感受性試験ではオフロキサシン (OFLX),シプロフロキサシン (CPFX),エリスロマイシン (EM),ホスホマイシン (FOM),テトラサイクリン (TC)の5薬剤を用いた。種別の結果,230株中C. jejuniが200株 (87.0%),C. coliが28株 (12.2%),C. lariが2株 (0.9%)検出された。1年を通した月別の検出状況では,総数は6 月から9月にかけて多く,菌種別ではC. jejuniは7,9月,C. coliは2月に最も多く検出された。薬剤耐性において,OFLX,CPFX,EM,TCにおいてC. jejuniよりC. coliの耐性率が高いことが示された。FOMにおいてはC. jejuniで耐性が200株中2株 (1.0%),C. coliでは28株すべてが感受性であった。また1剤以上の耐性率はC. jejuniが200株中58株 (29.0%),C. coliが28株中15株 (53.6%)とC. jejuniと比較してC. coliの耐性率が高いことがわかった。
肉類の摂取と CES-D scale による抑うつ傾向との関連性
阿部 由紀子
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp7-12
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:肉類,CES-D scale,抑うつ傾向
本文:PDF(0.5MB)
要旨
本研究では,成人を対象に,肉類の摂取と抑うつ傾向の関連性について調査を行った。食品の摂取は自記式食事歴調査票により,抑うつ傾向の程度はCenter for Epidemiologic Studies Depression (CES-D) scaleにより調査した。肉類の摂取量はCES-D 低得点(<16)群と高得点(?16)群の間で有意な差を示さなかった。牛および豚のひき肉,豚ロース肉,牛もも肉,鶏ひき肉,鶏もも肉,鶏ささみの摂取頻度については,2群間で有意な差が認められた。牛および豚のひき肉,豚ロース肉,牛もも肉の摂取頻度はCES-D 低得点群で高い傾向を示し,鶏ひき肉,鶏もも肉,鶏ささみの摂取頻度は,CES-D高得点群で高い傾向が認められた。以上の結果から,牛および豚のひき肉,豚ロース肉,牛もも肉の摂取頻度は抑うつ傾向と負の関連性,鶏ひき肉,鶏もも肉,鶏ささみの摂取頻度は正の関連性があると推測される。
医療依存度の高い患者と家族への退院支援
渡邊舞 喜多島直美 川添郁夫
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp13-19
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:医療依存,退院支援,在宅療養
本文:PDF(0.7MB)
要旨
医療依存度が高いまま在宅療養することとなった患者の介護者である家族に半構造化面接を実施し、看護師の退院支援のあり方を検討した。分析方法は、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いた。その結果、≪症状の進行に対する不安≫、≪医療者からの言葉による自宅退院の意識化≫、≪医療処置を実施する家族の恐怖感≫、≪医療処置への不安と退院への覚悟≫、≪医療者からもたらされる安心感≫、≪タイミングをとらえた退院指導≫、≪自立度が高まる喜び≫、≪具体的な退院準備≫、≪自宅退院の決断≫、≪家族を優先する態度≫の10概念が抽出され、意味内容から【患者家族の様々な思い】、【サポートに基づく安心感と自信】、【信頼関係の確立による自宅退院の決断】の3カテゴリーに集約された。家族は在宅療養に際して症状の進行に対する不安や恐怖感を強く抱いていた。看護師は家族の思いを共有する態度や安心できる関係づくりに心掛けていた。在宅移行を見据えて提供された医療者からの指導、共感、励ましが、家族にとって在宅介護への覚悟を決めた契機となっていた。看護師からの退院指導に際しては、患者と家族の意見を尊重し、コミュニケーションをとりながら家族目線で指導すること、病状の変化に沿った、家族の意思決定を支援していくことが重要であった。
看護職者の「患者指導技術評価尺度」の開発
小倉能理子 一戸とも子 齋藤久美子 佐藤真由美 工藤ひろみ 藤田あけみ 會津 桂子
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp21-28
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:看護師,患者指導技術,評価尺度,患者教育
本文:PDF(1.1MB)
要旨
本研究の目的は,看護職者が自己および他者の患者指導技術について客観的に評価できる「患者指導技術評価尺度」を作成し,信頼性および妥当性を検証することである。方法は,認定看護師および看護師を対象にした質問紙法であり,調査内容は,研究者らが導き出した患者指導に関する87項目である。結果,信頼性および妥当性が確保された8下位尺度,63項目からなる尺度を開発した。尺度を構成する下位概念は,「患者の自己管理能力のアセスメント」,「家族や必要な社会資源のアセスメント」,「指導内容・方法に関する実施計画の立案」,「わかりやすさに配慮した指導の実践」,「指導目標の設定と達成度の評価」,「指導過程のふり返り」,「共感的な指導姿勢」および「他医療従事者との協働」であった。開発した「患者指導技術評価尺度」は,看護職者が自己および他者の患者指導技術を評価するために活用可能である。
看護職者の「患者指導技術評価尺度(短縮版)」の開発
小倉能理子 一戸とも子 齋藤久美子 佐藤真由美 工藤ひろみ 藤田あけみ 會津 桂子
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp29-34
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:看護師,患者指導技術,評価尺度,患者教育
本文:PDF(0.6MB)
要旨
本研究の目的は,看護職者が自己および他者の患者指導技術について客観的に評価でき,日常において活用しやすい「患者指導技術評価尺度(短縮版)」を作成し,信頼性および妥当性を検証することである。方法は,研究者らが開発した「患者指導技術評価尺度」をもとに,複数の研究者で検討し導き出した33項目についての質問紙調査であり,対象は,認定看護師および看護師である。結果,信頼性および妥当性が確保された4下位尺度,30項目からなる尺度を開発した。下位尺度は,「アセスメント」,「計画立案」,「実践」および「評価」である。短縮版の下位尺度は,患者指導技術評価尺度の8下位尺度を4下位尺度に統合したものとなり,看護過程および患者指導過程の構成要素と一致している。加えて,項目数も減り,日常の患者指導の際の評価基準として十分使用可能と考える。
小児がん患児のきょうだいへの母親のかかわり
-きょうだいと母親の思いとの関連-
橋本美亜 藤田あけみ
誌名:保健科学研究 第8巻2号 pp35-44
公開日:2018/03/31
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:きょうだい,母親長期入院,小児がん
本文:PDF(0.9MB)
要旨
本研究の目的は,小児がん患児の長期入院により母子分離状態にある母親ときょうだいの思いと母親のきょうだいへのかかわりの方法について,明らかにすることである。方法は,過去に長期入院を経験した患児の母親ときょうだいへ半構成的にインタビューを行い,その内容を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的帰納的に分析した。母親の思いやかかわりは,14概念から【母親の複雑な思いを共有】,【母親が主体的する】,【きょうだいにやってもらう】,【誰かに依頼する】の4カテゴリーが生成され,きょうだいの思いは,8概念から【家族以外のサポート】,【きょうだいの揺れる心】,【患児の治療を支えたい気持ち】の3カテゴリーが生成された。きょうだいへの支援として,まずは母親が思いを共有できる場を提供する。そして,その中で看護師がファシリテーターとして,きょうだいへのかかわりについて母親の思いを受けとめつつ,情報の共有や提供を行うことが必要であると示唆された。