保健科学研究 第9巻 1号 原著論文

総説

看護学生における職業的アイデンティティの文献レビュー

髙瀬園子 佐藤美佳 西沢義子

誌名:保健科学研究 第9巻1号 pp1-10
公開日:2018/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:総説
キーワード:職業的アイデンティティ,看護学生,文献レビュー
本文:PDF(0.4MB)

要旨
看護学生の職業的アイデンティティに関する研究の内容を明らかにし,今後の教育的支援と研究の課題の示唆を得るために,医学中央雑誌とCiNiiを使用し文献レビューを行った。45件の論文が抽出され,内容を分類した結果,看護学生の職業的アイデンティティ得点は1年生が高く学年進行ともに低下し,卒業時に再び上昇する傾向があった。また,社会貢献などの志向性は高いが,看護職になることの自信が低い傾向にあった。心理的要因や志望動機などの生活歴といった個人特性からの影響も関連していた。教育的支援としては,振り返りや相談,学習意欲を高めるための教育の必要性があり,今後は,職業的アイデンティティと学習意欲との関連を明らかにする必要性が示唆された。

原著論文

高齢者におけるアクティビティを継続するための要因

鎌田洋輔 木立るり子 北嶋結

誌名:保健科学研究 第9巻1号 pp11-17
公開日:2018/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:高齢者,アクティビティ,ウォーキング,継続要因,介護予防
本文:PDF(0.4MB)

要旨
(目的)高齢者がアクティビティを継続するための要因について明らかにすることである。(方法)研究協力に同意した60歳以上の高齢者12名に対し,グループ活動する群の6名と個人で活動する群の6名に分け,2ヵ月半の間,ウォーキング・プログラムを実施した。分析は,①継続性,②認知機能の維持,③身体機能の維持に関する測定データを,群別およびプログラム実施前後で比較検討した。(結果)両群ともに活動を継続でき,グループ活動の群で目標を段階的に高めていく傾向があった。400m歩行時間は,群間,プログラム前後で有意な差は認められなかった。月別の1日平均歩数は個人で活動する群の方で有意に多かった。認知機能は,両群とも運動領域で有意に向上した。(結論)自己と他己の双方からのモニタリングが継続に寄与することが示唆された。また,グループ活動が自己目標志向性に有効であった。活動の継続が,介護予防の観点から有効であることが示唆された。

報告

看護学生が日常生活経験と看護についての学びから 看護についての考えを形成していくプロセス-一人暮らしを始めた学生のインタビューより-

須藤みつ子 平川美和子

誌名:保健科学研究 第9巻1号 pp17-24
公開日:2018/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:看護学生,日常生活経験,学び,看護観
本文:PDF(0.4MB)

要旨
目的:一人暮らしをしている看護学生の,日常生活と学びから看護に対する考えを形成していくプロセスを明らかにし,看護基礎教育の示唆を得ることである。方法:看護学を専攻している大学1年生10名を対象に,看護を学んだことによる日常生活の捉え方を中心に半構成的インタビューを行い,分析は修正版グランデッドセオリーを用いた。結果:『過去の経験と看護の学びとの結びつきを考える』『環境調整についての学びと日常生活とをつなげて考える』『食事についての学びと日常生活とをつなげて考える』『他者に対する理解の仕方について看護の学びと日常生活とをつなげて考える』『一人暮らしゆえの日常生活経験から看護の学びを考える』『看護師像に対する捉え方について考える』を,双方向の関係によりプロセスを形成していた。考察:学生の経験と学びとのつながりを意識した教育的関わりを行うことが看護観を形成するであろうという示唆を得た。


筋ジストロフィー患者の看護とセクシュアリティに関する文献研究

工藤千賀子 工藤せい子

誌名:保健科学研究 第9巻1号 pp29-37
公開日:2018/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:筋ジストロフィー,看護,セクシュアリティ,文献研究
本文:PDF(0.4MB)

要旨
本研究は,筋ジストロフィー患者の看護とセクシュアリティに関する研究の動向を,文献研究により明らかにし,今後の課題を抽出することを目的とした。医学中央雑誌Web版から得られた筋ジストロフィー患者の看護に関する文献124編,PubMedを用いて得られた国外における筋ジストロフィー患者のセクシュアリティに関する文献7編,さらに,CiNiiを用いて得られたわが国の看護学領域におけるセクシュアリティに関する研究報告61編と論文8編を分析対象とした。文献のタイトルからみた対象者,テーマと掲載年次等で分析した。その結果,わが国のセクシュアリティに関する研究のうち49編(80.3%)は,がん患者や泌尿器科患者を対象に行われていた。8編の論文中,用語の定義が明記されているものは4編であった。筋ジストロフィー患者のセクシュアリティに関する文献はわが国では見当たらず,国外では,患者や介護する母親を対象とした文献が検出された。わが国において,医療空間は「性」や「セクシュアリティ」の問題を遠ざけようとしていると言われている。しかし,日常的に医療との関係をもちながら生活していかざるを得ない筋ジストロフィー患者を人間全体としてみるときに,セクシュアリティに関する看護に注目した研究が必要であることが示唆された。


大学生におけるアダルト・チルドレンおよび共依存と抑うつとの関連性

阿部由紀子

誌名:保健科学研究 第9巻1号 pp39-43
公開日:2018/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:アダルト・チルドレン,共依存,抑うつ
本文:PDF(0.3MB) 

本研究では,大学生を対象に,アダルト・チルドレン,共依存,抑うつ傾向について質問紙調査を行うとともに,アダルト・チルドレンおよび共依存と抑うつとの関連性について解析を行った。調査の結果,アダルト・チルドレンである可能性が高い者は10名(21.3%)であり,共依存者である可能性が高い者は7名(14.9%)であった。また,アダルト・チルドレンである可能性が高い者はすべてCenter for Epidemiologic Studies Depression (CES-D) Scaleの得点が16点以上であり,その平均値は,アダルト・チルドレンではないと考えられる者に比べ,有意に高い値であった。共依存者である可能性が高い者のCES-D Scale得点の平均値も,共依存者ではないと考えられる者に比べ,有意に高い値であった。これらの結果から,アダルト・チルドレンおよび共依存と抑うつとの関連性が示唆された。