保健科学研究 第13巻 2号 原著論文

原著論文

CTの肺野イメージにおける深層学習を用いた再構成法の有用性に関する基礎的検討:ファントム実験

坂本颯,工藤幸清,阿保淳,荒井僚太,千田真由香,野呂朝夢祐,小山内暢,對馬惠,柏崎碧,森田竹史,成田将崇

誌名:保健科学研究 第13巻2号 pp1-9
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:深層学習,画像再構成,画像評価,CT
本文:PDF(0.6MB)

要旨

Computed tomography (CT) 装置の画像再構成法に深層学習を用いた deep learning image reconstruction (DLIR) が搭載されるようになった。そこで,肺野用の画像再構成関数を持たないDLIRについて,肺野におけるDLIRの有用性を検討するために,他の再構成法との比較を行った。ブロックエッジ法による modulation transfer function (MTF) ならびに radial frequency 法による noise power spectrum (NPS) の物理的評価を行った。また,ナイロン製のラインファントムを用いてノイズや信号欠損数を測定し,さらに contrast noise ratio (CNR), signal noise ratio (SNR) を算出した。CNRとSNRより本実験に使用したラインファントムにおいて,DLIRの線量低減の可能性を検討した。その結果DLIRは,MTF,NPSともに良好であり,ノイズと信号欠損数が少なかった。さらに,CNRとSNRより算出されたDLIRの線量低減率は約50%であり,DLIRの有用性が示唆された。


IVR室内における鉛板使用による床からの散乱線量低減効果の検討

阿保淳,工藤幸清,荒井僚太,坂本颯,千田真由香,野呂朝夢祐,小山内暢,對馬惠,小宮睦弘,葛西慶彦,成田将崇

誌名:保健科学研究 第13巻2号 pp11-18
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:IVR,散乱線,鉛板
本文:PDF(0.8MB)

要旨

Interventional radiology (IVR) 室内における術者の足部の被ばく低減を目的とし,鉛板使用による床からの散乱線量低減効果の検討を行った。IVR室の床に鉛板を置かない場合と置いた場合での術者の足部位置における散乱線量をモンテカルロシミュレーションソフトParticles and heavy ion transport code system (PHITS)により算出した。同様に,ガラス線量計ならびにサーベイメータによる実測を行った。その結果,鉛板使用による散乱線量の低減率は,シミュレーションの場合において約7割,実測の場合において約3割となった。このことから,鉛板使用は術者の足部の被ばく低減に有効であることが示唆された。


看護師の職業性ストレスとレジリエンスの実態

高橋裕子,冨澤登志子,三上佳澄,北島麻衣子,佐藤真由美

誌名:保健科学研究 第13巻2号 pp19-26
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:レジリエンス,職業性ストレス,ワークライフバランス,看護師
本文:PDF(0.8MB)

要旨

職業性ストレスとレジリエンスの実態を明らかにすることを目的に,全国の医療機関に勤務する看護師776名に①個人属性②二次元レジリエンス要因尺度③職業性ストレス簡易調査票で構成されたアンケートを実施した。その結果,職業性ストレスおよびレジリエンスは,個人属性や職場環境との関連が示唆された。また,目標あり群は目標なし群と比較して資質的・獲得的レジリエンス共に有意に高く,活気が高かった。職業性ストレスはレジリエンスと関連し,仕事と家庭という多忙な環境下においても目標を持ちキャリア維持・向上ができる環境の構築が,メンタルヘルスにおいて重要であると考える。


食事中のナトリウム含有量の簡便な測定法

中島里美,伊藤春香,宮地博子,玉田真梨菜,木田和幸

誌名:保健科学研究 第13巻2号 pp27-33
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:原著
キーワード:ナトリウムイオンメータ,測定法,ナトリウム含有量,大量調理,食塩摂取量
本文:PDF(0.6MB)

要旨

本研究では,大量調理における食事を用い,ナトリウム量の測定をイオンメータと原子吸光光度計を比較検討し,簡便な測定法の検討を行うことを目的とした。給食管理実習期間中の連続した 5 日間の食事を対象とし,主食以外の汁物,主菜,副菜 1,副菜2 を各 10 食ずつ無作為に採取した。料理毎に採取した 10 食を無作為に 5 食ずつに分け,2 つの測定法の試料とした。採取した 20 種類の料理全てにつき,原子吸光光度法とイオンメータ法の 2 方法でナトリウム濃度を測定した。2 方法間の相関は 0.929(p<0.001)であり,良好な相関が認められたが,イオンメータを用いたナトリウム濃度は,原子吸光光度法系を用いたナトリウム濃度よりやや高い値を示す傾向が認められた。また,高濃度域の測定値に変動が認められた。今後の課題として,高濃度域に認められた変動の要因検討,前処理方法等の検討が必要である。

報告

妊婦の視点から見た健康診査における助産師の課題

鎌田璃沙,早狩瑶子,髙梨一彦,三崎直子

誌名:保健科学研究 第13巻2号 pp35-42
公開日:2022/09/30
Online ISSN:1884 6165
論文種別:報告
キーワード:妊婦健康診査,妊婦,助産師,保健指導
本文:PDF(0.6MB)

要旨

本研究はA県内で妊婦健診を受けている妊婦の視点から,助産師が提供すべき援助の課題を明らかにすることを目的に行った。妊娠初期6名,妊娠後期6名の妊婦計12名を対象に1人あたり2回,妊婦健診終了後に半構造化個別面接調査を行った。調査内容は,属性,妊婦健診の担当者,関わった時間,診察,診断の内容相談・保健指導の内容,妊婦健診を受けての気持ちと日頃考えていること,母親意識の変化等であり,内容を質的に分析,評価した。その結果,妊婦健診で助産師と関わる時間は短く,妊婦の視点からは助産師の活動がみえてこなかった。妊婦の殆どが妊婦健診で不安やわからないことの相談や保健指導を受けられることを理解していなかったと考えられる。妊婦が妊娠に伴う変化に適応し,より健康的に妊娠生活を送り出産・育児生活を迎えるため,助産師の活用を拡げ医師と役割分担等で連携し,助産師の保健指導の機会を設けることが求められ,これが助産師の課題の一つと言える。